「被告 金正恩様」東京地裁前の掲示が話題 北朝鮮に宛てた「公示送達」って何?「東京地方裁判所の掲示板前に人だかりがあった」とのツイートが、一緒に掲載されていた写真の画像とともに話題になっている。画像には、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を被告とし、その代表者である金正恩総書記宛の書面が掲示された様子が写っていた。その書面には「公示送達」と記載されており、事件名には「北朝鮮帰国事業損害賠償請求事件」とある。この裁判は、在日朝鮮人らの帰還事業で北朝鮮に渡ったのち同国を脱出し日本に戻った脱北者が、北朝鮮政府を相手取って総額5億円の損害賠償を求めたものだという。第1回口頭弁論は10月14日に開かれる予定だ。提訴されたのは2018年8月だが、約3年間にわたって主張や証拠の整理などが行われていた。この裁判に金正恩氏がまともに応じる可能性は低いと考えられるが、なぜこのような掲示がされたのだろうか。森田雅也弁護士に聞いた。――「公示送達」とはどのようなものでしょうか。「公示送達」とは、裁判所書記官が送達書類を保管し、送達を受ける人にいつでも交付する旨を裁判所の掲示場に掲示して行う送達のことをいいます。そもそも「送達」とは、当事者に対し、法定の方式に従い、訴訟上の書類を交付してその内容を知らせる、又は、これを交付する機会を与える裁判所の行為のことをいいます。訴状であれば、通常は、被告の住所に郵送する方法で送達が行われます。しかし、被告が訴状を受け取らないことがあります。その場合には、訴状が裁判所に戻ってくることになりますが、訴状の送達が完了しないと裁判自体がスタートできません。そこで、通常の方法では送達ができない場合でも、裁判を始められるようにするための一つの方法として、公示送達という方法が法律上認められています。――意図的に送達を受け取らないから公示送達をするというケースが多いのでしょうか。いえ、公示送達が行われるケースとして圧倒的に多いのは、被告がどこに住んでいるか不明な場合です。この場合には、民事訴訟法110条1項1号に基づいて公示送達が行われます。しかし、今回は被告が北朝鮮という特殊なケースです。このような場合には、民事訴訟法110条1項3号に基づいて公示送達が行われることがあります。今回は、被告が日本と国交のない北朝鮮であり、送達を嘱託できる機関がありません。そこで、民事訴訟法110条1項3号に基づく公示送達が行われたと考えられます。今回のケースでは、被告である北朝鮮は、答弁書を出さず、かつ、口頭弁論にも出席しないでしょう。しかし、だからといって直ちに原告の主張が認められるということにはならないので、原告としては丁寧に立証をしていく必要があります。詳細↓
日: 2021年8月30日
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