東條英機自殺未遂事件
9月10日、連合国軍最高司令官のダグラス・マッカーサーが、日本占領部隊の一員であるアメリカ第8軍のロバート・アイケルバーガー司令官に戦争犯罪人に関する指令を出す。敗戦後の内閣にあって陸軍解体の役目を引き受けていた陸軍大臣下村定は、この日、東條を陸相公邸に招き、自決しないで昭和天皇のために尽くすよう求めている。9月11日午後3時ごろ、表が騒がしいのを聞いて、東條は妻勝子に知人の家に身を寄せるように命じて家から出した。午後4時ごろ、アメリカ軍憲兵(MP)の一行が東條の自宅に到着。玄関の扉越しに話をしたいと告げると、玄関右側の窓から東條が顔を見せて正式の逮捕かどうかと通訳を介して尋ねた。MPが逮捕令状を見せて、すぐ支度するように求めると、東條は同意して玄関を開けると言って窓を閉めた。
4時17分ごろ、玄関が開く代わりに1発の銃声が響いた。
東條を「殉教者にしてはならない」と侵略戦争の首謀者として断罪することを決めていたマッカーサーの指示の下、東條にはアメリカ軍による最善を尽くした手術と看護を施され、奇跡的に九死に一生を得る。
外務大臣の重光葵は東條の自決未遂を知ると、日本政府を通さずに逮捕に向かったこと、ならびに重体にもかかわらず連行したことについて、GHQに対して鈴木公使から抗議を入れさせた。
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