「現代医学の礎に感謝…」緒方洪庵が残した”開かずの薬瓶”、中身が判明【160年前】

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緒方洪庵が残した「開かずの薬瓶」、ミュー粒子で中身を特定 阪大など
江戸時代末期の医師、蘭学者の緒方洪庵(1810~1863年)が使ったガラスの薬瓶の中身を、瓶を開けずに突き止めた、と大阪大学などの研究グループが発表した。大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)の分析装置で透過性の高い素粒子「ミュー粒子」を使い成功した。医薬品の文化財の成分を非破壊で解明したのは世界初といい、当時の治療戦略の解明や、医療関係の文化財の継承に役立つ成果という。
洪庵は大阪大学医学部の源流で、福沢諭吉、大村益次郎らを輩出した蘭学塾「適塾」の開祖。同大は洪庵が壮年期と晩年に使った2つの薬箱を所蔵しており、晩年のものには液体と固体の製剤が入ったガラス瓶22本と木製容器6本が入っている。うち数本は栓が固く開かない状態。洪庵は瓶の上部に独自に「甘」「下」「酒」などと漢字1文字のラベルをつけたが、何を意味するかは本人にしか分からない。
結果、水銀と塩素の存在を観測。当時「甘汞(かんこう)」と呼ばれ、おしろいや下剤に使われた塩化水銀(I)=Hg2Cl2=であるとの考証に一致した。ラベルの「甘」は甘汞を指すと推定される。
幕末にはコレラやインフルエンザなどの感染症が大流行した。研究グループの大阪大学総合学術博物館の高橋京子招へい教授(生薬学)は「それらの原因が分からない中、洪庵は既存薬で患者を楽にしようと、最新知識を勉強しながら医療を続けた。その治療戦略を知ることはまさに温故知新。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でワクチンや薬の開発途上にあるわれわれが、示唆を得られる情報は多いはずだ」と説明する。

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