変わるか差別への認識 高まるBLM運動
東京でも「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)」の声が響き渡るだろうか。東京オリンピックが来夏開催されたら、国際オリンピック委員会は平等や社会正義の実現を求める選手への対応を迫られることになるだろう。
BLMは、米国内で黒人差別や警察による暴力に対する抗議から生まれた運動だ。今年はプロバスケットボールNBAや大リーグ、テニスなどかつてないほど多くのアスリートに影響を与えている。
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全米V2・大坂なおみの「BLM」は“政治利用”なのか
しかし、黒人差別の撤廃を訴える大坂のマスク抗議が本当に「政治利用」につながりNGと糾弾されるべきことなのだろうか。確かに、米国公民権運動で黒人たちが拳を高く突き上げる示威的な抗議行動「ブラックパワー・サリュート」をかつてメキシコ五輪の表彰式の場において黒人選手メダリスト2人が行い、これを「政治利用」と判断したIOC(国際オリンピック委員会)から事実上の追放処分を受け、長きに渡って過剰なバッシングにさらされ続けた悲しき出来事は歴史上に刻まれている。そして当のIOCは五輪の舞台で参加選手たちに対し、今も「政治利用」のパフォーマンスや言動を断固認めないとしている。
まず、ここで強調しておきたいのは今大会と、そのIOCは無関係であるということだ。大坂批判派の人たちは何が何でもIOCの絶対主義に則りたいらしく、それを都合よく自らの主張に結びつけ「BLM」の示威行為こそ「スポーツ」と「政治」の分離に反するなどとシュプレヒコールをあげている。しかしながらそもそもの話で言わせてもらえば、今大会は五輪の舞台ではない。
今大会を公認するITF(国際テニス連盟)、女子プロテニスを統括するWTA(女子テニス協会)、そして今大会主催者のUSTA(全米テニス協会)のいずれも大坂の行動を事実上容認している。そして何よりもWTAは大坂の「BLM」に賛同していることも忘れてはいけない。大坂は先月23日に米ウィスコンシン州で起きた警官による黒人男性銃撃事件に抗議するため、自身も出場することになっていた「ウエスタン・アンド・サザンオープン」の準決勝(当初は8月27日開催予定)に大会主催者側のWTA(女子テニス協会)へ筋を通して事前連絡を入れた上で一度は棄権する意思を表明。その抗議行動にWTAが「賛同」の意思を表明し、同27日の試合開催をすべて1日延期することを決めたことで大坂も棄権を撤回して準決勝に臨んでいる。
ところが、この一連の流れに関しても日本では詳細を把握できていないまま簡略化して報じたメディアが少なからずあったことなどもあり、一部の人たちから「大坂が事前通達なしに棄権を表明し、それに慌てたWTAはやむなく27日の試合を延期。つまり大坂の身勝手なワガママが大会の秩序を乱したのだ」と決めつけられてしまっていた。つまり残念なことに大坂には「何だか面倒くさいプレーヤー」という間違ったイメージが日本国内の一部では植え付けられてしまった側面も実はあったのである。
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