アングル:「朝鮮人戦犯」最後の生存者、居場所なき75年の苦悩
何も知らない人には、95歳の李鶴来(イ・ハンネ)さんは高齢化する日本社会で長生きする老人の1人にしか見えないかもしれない。
しかし李さんの心は、その後の彼の人生を決定づけた75年前の残酷な出来事にずっととらわれてきた。
1942年、占領下にあった朝鮮半島で日本の軍属になったこと、タイとビルマ(現ミャンマー)を結ぶ泰緬鉄道の建設に関わったこと、戦後に戦争犯罪人になったこと、そして日韓両国から歴史の片隅に追いやられたこと──。
日本政府は1951年に調印されたサンフランシスコ講和条約で主権を回復、その2年後から旧軍兵士に恩給を支払ってきた。戦犯とその遺族も支給対象に含まれる。さらに東京の靖国神社には、戦争を指導したA級戦犯を合祀している。
しかし日本のために戦った朝鮮人は、講和条約で日本国籍を失った。これは恩給を受ける資格を失ったことを意味する。韓国籍となった李さんにとって重要なのは、日本人兵士には与えられた世の中の関心、そして幕引きした感覚を得られなかったことだ。
「私の話を聞いてくれ。なぜ彼らは私たちを違うように扱うのか」。韓国語と日本語が入り混じりながら、かろうじて聞こえるような声で言う。「不公平だし、何の意味もない。この信じられないような状況をどう受け入れればいいのか」
第2次世界大戦には 約24万人の朝鮮人男性が日本兵として参加した。連合国軍は戦後、戦犯容疑者を一斉に捕らえた。朝鮮人も日本人と同じように扱われたと、歴史家は指摘する。
「戦争犯罪で有罪判決を受けた朝鮮人は、他の朝鮮人からは日本への協力者とみなされた。日本政府からは元日本兵として認められず、戦後はひどい目に遭った」と、オーストラリア国立大学のロバート・クリッブ教授は言う。「自国民にだけ恩給を支給し、日本軍の一部だった朝鮮人に支給しなかったのは」不公平だと、同教授は指摘する。
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